第2回 辻静雄食文化賞(2011年)

第2回辻静雄食文化賞選考委員会(敬称略)

委員長
石毛直道(国立民族学博物館名誉教授)
委 員
鹿島茂(明治大学教授)
阿川佐和子(作家)
福田和也(慶應義塾大学教授)
西山嘉樹(文藝春秋・ライツ管理部部長)
辻芳樹(辻調グループ代表 辻調理師専門学校理事長・校長)
山内秀文(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所・研究顧問)

対象期間

2009年12月~2010年11月

第2回辻静雄食文化賞選考委員会

2011年4月28日(木)帝国ホテル「柏の間」にて
本賞の最終選考会および専門技術者賞の審議を行いました。

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受賞作品および受賞者

『茶懐石に学ぶ日日の料理』(後藤加寿子・著/文化出版局・刊)

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『茶懐石に学ぶ日日の料理』 後藤加寿子・著/文化出版局・刊

家庭でできる心づくしのもてなしこそが、懐石料理の本来の姿だというメッセージを静かに強く打ち出した茶懐石の入門料理書。
武者小路千家の長女に生まれた著者が、プロの包丁技がなくても美しく盛りつけられる向付、毎月味噌の合わせ加減を変えていくみそ汁と、四季の献立の調え方を余すことなく伝える。手順写真で塩のふりかたなど勘所をていねいに見せたり、茶室と同じ料理をテーブルに並べるよう盛りつけを変えて見せたり。どうひとりで段取りするか、日常の生活に取り入れるかという視点は、料理屋の発想にはないもの。
ビジュアル面での挑戦としては、茶室の暗さそのままを料理写真に取り入れている。その陰影は、料理がはっきり見えないという点で意見がわかれるところだが、茶室の空間や空気まで感じさせる。魯山人や乾山から現代作家まで、器づかいも見所のひとつ。
家庭料理が簡単・スピードという方向に走ったまま、なかなか戻ってこないなか、出版の意義は大きい。

●後藤加寿子氏 略歴
武者小路千家(官休庵)十三世家元有隣斎と千澄子の長女として京都に生まれる。同志社大学卒業。茶懐石料理の第一人者であった母の影響を受け、日本料理への造詣を深める。また、大学在学中は美術史を専攻し、陶磁器を研究。結婚後は料理研究家として懐石料理の教室を主宰するかたわら、女性誌での連載、テレビ番組などで幅広く活躍。
本格茶懐石と家庭料理は対極にあるように見えて、お越しいただくお客様であれ身近な家族であれ、だれかのために心を込めて作る点では本質的に同じとの考えから、この2つを柱に教室を主宰している。
近年の家庭の食事情の変化をただ危惧するのではなく、現代のライフスタイルに合わせた、日日の暮らしに取り入れやすい料理を提案して、古きよき日本料理の伝統を若い世代に伝えることに意欲的に取り組んでいる。

●主要著作
『こころを尽くす―わが家に伝わるおつきあいの奥義』ベストセラーズ、2002
『和のきほん、いつもの味をおいしく、手早く。』文化出版局、2004
『武者小路千家ゆかりの京の味と季の心』(千澄子との共著)集英社、2006
『「ストウブ」でつくる和ごはん』マーブルトロン、2009
『京都生まれの和のおかず』世界文化社、2009
『茶懐石に学ぶ日日の料理』文化出版局、2010

文化出版局公式サイト
後藤加寿子氏 HP

受賞理由
家庭でできる心づくしのもてなしが懐石の本質に通じることを静かに訴え、伝統的な料理美学を体現しながらも現代性を帯びた作品の完成度の高さに対して。

『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』(岩村暢子・著/新潮社・刊)

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『家族の勝手でしょ! 写真274枚で見る食卓の喜劇』 岩村暢子・著/新潮社・刊

『家族の勝手でしょ!』は、首都圏の子供のいる家庭の食卓を徹底的に調査すること10数年。その集大成。10,000枚以上の写真データから274枚をピックアップ。そこから浮かび上がる、今どきの家族像。お菓子で朝食、味噌汁回し飲み、夫と妻の昼飯格差、赤ちゃんの一人食べ、家庭のネットカフェ化。「信じられない!」と叫ぶか、「他人事じゃない…」とため息をつくか。食卓は、家族という社会の映し鏡。家族の変貌をあますところなく伝える、類書のない問題作。

●岩村暢子氏 略歴
北海道生まれ。法政大学卒業。
広告会社アサツー ディ・ケイ 200Xファミリーデザイン室長。
家庭の食卓の丁寧で詳細な調査を通して、現代日本の家族や社会を見つめる研究をしている。
受賞作の基礎資料となった調査「食DRIVE」は、1960年以降に生まれた、首都圏在住の子供を持つ主婦を対象とするもので、1998年から継続中。食生活に関するアンケートへの回答の回収、決められた1週間の1日3食についての調査対象者自身の日記と写真による記録の回収、アンケートへの回答と日記・写真の記録の矛盾点や疑問点に関する個別インタビューの3段階の手順を踏んで行われる。
調査データがあぶりだした家庭の食の変貌を、数々の著書で広く紹介。その現実の重みが社会的に大きな衝撃を与え、食をめぐる議論に一石を投じている。

●主要著作
『変わる家族 変わる食卓―真実に破壊されるマーケティング常識』勁草書房、2003
『〈現代家族〉の誕生―幻想系家族論の死』勁草書房、2005
『普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓』新潮社、2007
『普通の家族がいちばん怖い―崩壊するお正月、暴走するクリスマス 』新潮文庫、 2010
『「親の顔が見てみたい!」調査―家族を変えた昭和の生活史』中公文庫、2010
『家族の勝手でしょ!写真274枚で見る食卓の喜劇』新潮社、2010

新潮社公式サイト

受賞理由
長期間の調査に基づき、家庭の食卓の今を鮮烈な写真とともにあぶり出した意欲作。当事者家族のインタビューを含む丁寧な調査記録の社会学的価値に対して。

第2回辻静雄食文化賞贈賞式

2011年6月15日(水) 大阪あべの辻調理師専門学校・本館にて
第2回辻静雄食文化賞の贈賞式が6月15日、辻調理師専門学校にて開催されました。 当日は、受賞者の後藤加寿子様、岩村暢子様に加え、それぞれ編集を担当された皆様にもご出席いただきました。 また、選定委員会から石毛直道・委員長、ゲストとして第1回の受賞者の奥村彪生様にもご出席いただきました。

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