第1回 辻静雄食文化賞(2010年)

第1回辻静雄食文化賞選考委員会(敬称略)

委員長
石毛直道(国立民族学博物館名誉教授)
委 員
鹿島茂(明治大学教授)
阿川佐和子(作家)
福田和也(慶應義塾大学教授)
西山嘉樹(文藝春秋・ライツ管理部部長)
辻芳樹(辻調グループ代表 辻調理師専門学校理事長・校長)
山内秀文(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所長)

対象期間

2008年12月~2009年11月

第1回辻静雄食文化賞選考委員会

受賞作品および受賞者

『日本めん食文化の一三○○年』(奥村彪生・著/農文協・刊)

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『日本めん食文化の一三〇〇年』 奥村彪生・著/農文協・刊

●奥村彪生(おくむら あやお)
伝承料理研究家。日本各地に古くから伝わる料理を丹念なフィールドワークによって掘り起こす一方で、文献資料を広く渉猟して食文化の歴史的研究に取り組み、日本人の食生活の変化と外来の食文化の受容の歴史を跡付ける。文献資料に基づいて再現した、飛鳥時代から昭和までの料理の展示会は多数にのぼる。世界の民族の料理にも詳しい。
また、NHK「きょうの料理」、「関西ラジオワイド旬の味」、「日めくり万葉集」他のテレビ・ラジオ番組に出演し、軽妙な語り口で人気を集めるなど、メディアを
通した情報発信にも熱心に取り組んでいる。こうした一連の活動が認められ、
2000年度、和歌山県より文化功労賞を授与される。

●奥村彪生氏 略歴
1937年、和歌山県生まれ。
近畿大学理工学部中退。
神戸山手女子短大ならびに神戸山手大学教授、奈良女子大非常勤講師を歴任。
2009年、学位論文『日本のめん類の歴史と文化』を美作大学に提出。学術博士となる。
同年9月、学位論文をもとに、『日本めん食文化の一三〇〇年』を執筆。
同書を農山漁村文化協会(農文協)より出版する。
現在、美作大学大学院客員教授、大阪市立大学大学院生活科学研究科非常勤講師。
奥村彪生料理スタジオ「道楽亭」主宰。

●主要著作
『聞き書 ふるさとの家庭料理』全20巻解説、農文協、2002‐2004
『料理屋のコスモロジー』(高田公理編、食の文化フォーラム22)、ドメス出版、2004
『料理をおいしくする仕掛け―日本の食べごと文化とフードデザイン』、農文協、2006
『おくむらあやおの ごはん道楽!―古今東西 おいしい米料理―』、農文協、2006
『おくむらあやお ふるさとの伝承料理』(絵本)全13巻、農文協、2006
『おもしろふしぎ 日本の伝統食材』(絵本)既刊10巻、農文協、2008‐2009

農文協公式サイト

受賞理由
日本の「めん食文化」を初めて網羅的に眺望できる力作。意欲的な文献探索と徹底したフィールドワークによってなされた著作に対して。

奥田 政行 (おくだ まさゆき)+山形在来作物研究会の活動

奥田政行氏は、山形県・庄内地域が生む豊かな食材を活かしたイタリア料理のレストラン、「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ。
山形在来作物研究会は、山形大学農学部教員が中心となって設立し、消滅の危機にあった在来作物の記録、保存に取り組んでいる大学・民間による有志の研究会。
両者が両輪となることで、生産者も巻き込み、地域をつないだ活性化が推進され、その活動が食文化を核とした地域振興の新しいモデルとして、全国的な注目を集めている。郷土の作物を<文化財>と捉え、その保存をシードバンクだけでなく、農家が再生産できるように、消費者が食べて守る仕組みを作っている点が注目される。
近年では行政も、奥田氏らを「食の都庄内親善大使」に任命するなど、その活動を支援している。2009年春には、東京・銀座の山形県のアンテナショップに、奥田氏がプロデュースしたレストラン、「ヤマガタ・サンダンデロ」が開店した。

●奥田政行氏 略歴
1969年、山形県鶴岡市生まれ。
高校卒業後、東京のレストランで修業を積み、26歳で帰郷。鶴岡ワシントンホテル、農家レストラン「穂波街道」で料理長を務める。
2000年、山形県鶴岡市にて「アル・ケッチァーノ」開店。
2003年、イタリア、マルケ州のオーガニックフェスティバルに参加。
2006年、毎日放送のテレビ番組「情熱大陸」に出演。反響を呼ぶ。
2006年、イタリア・スローフード協会国際本部主催の世界大会「テッラ・マードレ2006」で、「世界の料理人1000人」に選出される。
2009年、東京・銀座の山形県アンテナショップにて「ヤマガタ・サンダンデロ」開店。

●山形在来作物研究会の足跡
2003年4月、山形大学農学部内外で研究会設立の機運が高まる。
2003年5月、「山形在来作物研究会(仮称)」設立準備会が、山形大学農学部教員有志により発足する。
2003年7月、研究会の名称を「山形在来作物研究会(略称/在来研)」と定め、研究会組織の設立及びシンポジウム開催の準備を進める。
2003年11月、研究会を発足し、発足記念公開シンポジウム「在来作物は生きた宝物」を開催する。山形在来作物研究会誌(SEED)創刊号を発刊する。
2004年12月、公開シンポジウム「在来野菜たちは今―その現状と可能性を探る―」を開催する。SEED第2号を発刊する。
2005年4月、山形新聞に「やまがた在来作物」の連載を開始する。
2005年11月、公開トークショー「食べなきゃ庄内!」を開催する。SEED第3号を発刊する。
2006年11月、公開フォーラム「在来作物とスローフードはいい関係」を開催する。SEED第4号を発刊する。
2007年8月、『どこか畑の片すみで―在来作物はやまがたの文化財―』山形在来作物研究会編を山形大学出版会より発刊する。

<山形在来作物研究会会長>
江頭宏昌(えがしら ひろあき)山形大学農学部准教授

<山形在来作物研究会幹事>
平智(たいら さとし)山形大学農学部教授

山形在来作物研究会公式サイト
「奥田政行の山形イタリアン」

受賞理由
地域におけるレストランと研究機関との連携による、地域の食文化の向上に貢献した活動に対して。

第1回辻静雄食文化賞贈賞式

2010年5月8日(土) 大阪あべの辻調理師専門学校・本館にて

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