第7回 辻静雄食文化賞(2016年)

第7回辻静雄食文化賞選考委員会(敬称略)

委員長
石毛直道(国立民族学博物館名誉教授)
委 員
鹿島茂(明治大学教授)
阿川佐和子(作家)
福田和也(慶應義塾大学教授)
西山嘉樹(元文藝春秋編集者)
辻芳樹(辻調グループ代表 学校法人辻料理学館理事長 辻調理師専門学校校長)
八木尚子(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所所長)

第7回辻静雄食文化賞 小委員会(敬称略)

委 員
犬養裕美子(レストランジャーナリスト)
門上武司(「あまから手帖」編集顧問)
君島佐和子(「料理通信」編集長)
柴田泉(フードジャーナリスト)
戸田顕司(日経BP社 日経トップリーダー事業開発部長)
長沢美津子(朝日新聞東京本社 文化くらし報道部 次長)
西山嘉樹(元文藝春秋編集者)
山田健(サントリーホールディングス株式会社 エコ戦略部 チーフスペシャリスト)
淀野晃一(「月刊専門料理」編集長)
山内秀文(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所研究顧問)
八木尚子(辻調グループ 辻静雄料理教育研究所所長)

対象期間

2015年1月~12月

第7回辻静雄食文化賞選考委員会

2016年4月21日(木)「東京アメリカンクラブ」にて選考委員会を行いました。

第7回辻静雄食文化賞・受賞作品/受賞者

『慈悲深き神の食卓 イスラムを「食」からみる』
八木 久美子(やぎ くみこ)/著 東京外国語大学出版会/刊

hyoshi作品紹介:
アラブ宗教史を専門とする宗教学者、イスラム研究者の著者がイスラム教徒にとって食とはどういうものか、イスラムの教えに従って生きるとはどのようなことかを、あまり知られていないラマダーンやハラールの実情を紹介しながら、わかりやすく解き明かしている。

著者紹介:八木 久美子
東京外国語大学大学院・総合国際学研究院教授。
アラブ宗教史を専門とする宗教学者、イスラム研究者。
1958年生まれ。
1982年、東京外国語大学外国語学部アラビア語学科卒業。
1990年、東京大学大学院人文科学研究科より修士号取得。
1993年、ハーバード大学大学院より修士号を、2001年、博士号を取得。
著書に、『マフフーズ・文学・イスラム―エジプト知性の閃き』(第三書館、2006年)、『アラブ・イスラム世界における他者像の変遷』(現代図書、2007年)、『グローバル化とイスラム―エジプトの「俗人」説教師たち』(世界思想社、2011年)など。

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受賞理由
現代社会における産業的側面を含むイスラムの食を現実的な視点から語り、「食べる」という日常的な営みを通してイスラムの本質に迫る。日本では扱われることの少なかったイスラムの食をテーマとしている点で大きな意義がある。

井 信行(い のぶゆき)
熊本県阿蘇郡産山村 くまもとあか牛生産者

34-v250くまもとあか牛について
阿蘇外輪山上に広がる豊かな草原で、あか牛(褐色和種)を放牧型粗飼料多給飼育によって肥育し、赤身に特化した牛肉を生産している。井信行さんを代表とする産山村の畜産は、放牧、採草、野焼き、飼肥などの適正な管理により、生物多様性の保全、草原の景観維持や水源涵養にも貢献し、輸入飼料に頼らない今後の和牛飼養のモデルのひとつとなっている。

プロフィール
1935年、熊本県阿蘇郡産山村生まれ。
1988年、子牛の販売で阿蘇郡一となり、規模拡大のため、繁殖牛舎を新設し、牧草地用原野を買い増す。
1995年、共同で肥育用の牛舎を新設し、一貫経営を始める。同時に低農薬米の栽培に着手。
1996年、コイを使った無農薬米栽培を開始。
1997年、牛肉の直販組織「さわやかビーフ生産組合」を設立。
2001年、日本テレビ系列「どっちの料理ショー」に素材提供し、話題を集める。

熊本県地域づくり推進協議会副会長
ふるさと食農ほんわかネット副理事長
阿蘇環境デザイン策定委員会委員<世界文化遺産>

<主な受賞歴他>
全国畜産経営コンクール(1978年、中央畜産会)
熊本県立農業大学校実践教育協力(1983年)
農林水産大臣賞(1988年)
熊本県農業発展(1994年、熊本県知事)
阿蘇の草原保護と観光振興貢献(1999年、日本観光協会九州支部)

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写真提供/柴田書店「月刊専門料理」2011年12月号、2008年1月号より

 

受賞理由
阿蘇の草資源と水資源を活用した循環型畜産を実践し、地域ぐるみで自然環境を維持しながら持続的な生産活動を行っている。国産飼料による畜産の先進的実践例として注目に値し、その取り組みを主導した功績は高く評価できる。

第7回辻静雄食文化賞 専門技術者賞・受賞者

米田 肇(よねだ はじめ)
「HAJIME」(大阪市西区江戸堀 1-9-11 アイプラス江戸堀1F)
オーナーシェフ

HAJIME YONEDA-v300プロフィール
1972年大阪府生まれ。
近畿大学理工学部卒業後、電子部品メーカーで2年間設計に従事して退職。 エコール・キュリネール大阪あべの・辻フランス料理専門カレッジ(現エコール 辻 大阪)に入学。卒業後、日本とフランスのレストランで修業を積み、 「ミシェル・ブラス トーヤジャポン」で部門シェフとなる。
2008年、「Hajime RESTAURANT GASTRONOMIQUE JAPON」を開店し、独立。 開店後1年5ヶ月というミシュラン史上最短記録で三ツ星を獲得した。
2012年、店名を「HAJIME」に改める。

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受賞理由
これまでにない高みを目指して料理と向き合い、また料理人としてどのように社会に影響を与えるかを意識して、借り物ではない独自の思考を自らの料理で表現している。ジャンルを越えて料理の世界に新たな一歩を踏み出す可能性を感じさせ、続く世代の指針となる料理人像を示している。

第7回辻静雄食文化賞贈賞式

第7回辻静雄食文化賞の贈賞式が東京「八芳園 ニュイ」にて、2016年7月4日(月)に開催されました。

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受賞作『慈悲深き神の食卓 イスラムを「食」からみる』著者の八木久美子様、受賞者のあか牛生産者、井信行様、専門技術者賞受賞者の「HAJIME」のオーナーシェフ、米田肇様が式に臨まれました。

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これまでに辻静雄食文化賞を受賞された方々にも、多数ご出席いただきました。
昨年度、専門技術者賞を受賞された山本征治様の御発声で乾杯が行われ、井信行様の生産された米を原料として使った焼酎もふるまわれました。

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