第16回 辻静雄食文化賞 (2025年 )

第16回辻静雄食文化賞選考委員会(敬称略)

委員長
鹿島茂(フランス文学者、明治大学名誉教授)
委 員
石毛直道(国立民族学博物館名誉教授、文化人類学者)
福岡伸一(青山学院大学教授、分子生物学者)
湯山玲子(著述家、プロデューサー)
辻芳樹(辻調グループ代表、辻調理師専門学校校長)
八木尚子(辻静雄料理教育研究所副所長)

第16回辻静雄食文化賞 専門技術者賞選考委員会(敬称略)

委 員
門上武司(「あまから手帖」編集顧問)
君島佐和子(フードジャーナリスト)
柴田泉(「料理王国」編集長)
戸田顕司(日経ナショナル ジオグラフィック 社長補佐)
長沢美津子(朝日新聞東京本社 くらし報道部記者)
浜田岳文(株式会社アクセス・オール・エリア代表取締役)
林由香(株式会社KADOKAWA海外事業部 海外事業統括部 
山田健(サントリーホールディングス株式会社 サスティナビリティ経営推進本部シニアアドバイザー)
山内秀文(元辻静雄料理教育研究所研究顧問)
八木尚子(辻静雄料理教育研究所副所長)

対象期間

2024年1月~12月 ※人物や団体に関しては、直近5年間

第16回辻静雄食文化賞選考委員会

2025年4月24日(木)アットビジネスセンター渋谷東口前にて選考委員会を行いました。

第16回辻静雄食文化賞・受賞作品

『「台湾菜」の文化史-国民料理の創造と変遷』(台湾学研究叢書)
陳玉箴著、天神裕子訳、岩間一弘解説/三元社

作品紹介
国家と個人の関係性を生活に密着した食から探るという大きな問題設定のもと、「台湾菜(台湾料理)」という概念が、ここ100年の間にいかに形成され、変遷してきたかを検証し、政治、文化、市場の担い手がそこに及ぼした作用を多角的に解き明かした作品。高級料理店、宴席の料理だけではなく、日常的な庶民の料理や、20世紀末から重要な文化と認識されるようになった先住民の料理まで、台湾の食を重層的に描き出している。国家と個人の関係性を生活に密着した食から探るという大きな問題設定のもと、「台湾菜(台湾料理)」という概念が、ここ100年の間にいかに形成され、変遷してきたかを検証し、政治、文化、市場の担い手がそこに及ぼした作用を多角的に解き明かした作品。高級料理店、宴席の料理だけではなく、日常的な庶民の料理や、20世紀末から重要な文化と認識されるようになった先住民の料理まで、台湾の食を重層的に描き出している。

著者紹介
陳玉箴(Yujen Chen)
国立台湾師範大学台湾語文学系教授。
主な著書
『飲食文化』(華都文化事業有限公司)
『大碗大匙呷鮑未?一定要知道的台湾菜故事!』(聯合文學出版社)
『聴布拉格唱情歌』(葉子出版股份有限公司)
訳書
『飲食、権力与国族認同:当代日本料理的形成』(韋伯文化國際出版有限広司)
『媒介概念十六講』(韋伯文化國際出版有限広司)
<訳者プロフィール>
天神裕子(てんじん ゆうこ)
大妻女子大学等非常勤講師。
翻訳
林海音「英子の手紙」『黒い雪玉 日本との戦争を描く中国語圏作品集』(中国文庫)

受賞理由
 国民という抽象的なまとまりが共有する「幻想」としての国民料理=台湾料理の変遷をテーマとし、期間を100年と限定することによって、日本の統治下、第二次大戦後の国民党政府時代、民主化の進展という3段階の政治体制の変化がいかに台湾の食に反映されたかを鮮やかに浮かび上がらせている点を高く評価する。国民料理という視点に立った類書はなく、本書は大きな意義を持つ。また、台湾の現代史への理解も深める上でも優れた手引きとなる。

第16回辻静雄食文化賞 専門技術者賞・受賞者

前田尚毅(まえだ なおき)サスエ前田魚店店主

プロフィール
1974年、静岡県焼津市生まれ
1993年、静岡県立焼津水産高等学校卒業。水産会社で荷受けや仲卸しの仕事を学ぶ
1995年、サスエ前田魚店に入店
2024年、株式会社サスエ前田魚店の5代目として代表取締役社長に就任
<受賞歴>
2018年、公益財団法人食品等流通合理化促進機構 優良経営食料品小売店等表彰事業 日本政策金融公庫総裁賞受賞
2021年、『ゴ・エ・ミヨ2021』テロワール賞受賞
2023年、日本経済新聞社主催「超DX料理賞:持続可能な海の幸グルメ賞」受賞
2023年、ジャパンタイムズ主催「Sustainable Japan Award Satoyama部門:審査員特別賞」受賞<著作>
『冷やしとひと塩で魚はグッとうまくなる』2021年、飛鳥新社刊
『サスエ前田式 最高に旨い魚の仕立て術』2024年、産業編集センター刊

受賞理由
 漁業者との密な連携を確立することによって得られた高品質の魚を、独自の工夫を凝らして最高の状態で料理人に届ける仕組みを一から構築し、地域や食の業界に大きな刺激と影響を与えた。サプライチェーンの中間で発揮される専門的技術は陰に隠れがちだが、それを可視化し、その役割を拡張して川上の漁業者や川下の料理人の技術と掛け合わせることで、日本に暮らす人々にとって大切な魚食文化の活性化を促すモデルを示した功績は大きい。その意欲的な取組みを評価したい。

第16回辻静雄食文化賞贈賞式